コラム

「りとりし」で遊ぼう――逆さまの言葉を覚えてつなぐしりとり

「りとりし」の題字を囲み、二人が笑顔で言葉を交わす、温かな手描き風イラスト。
わたなべ

りとりし、しんぶんし、しす、すみす……。

これは、私が中学二年生のころに友人と考えて遊んでいた「りとりし」の一例です。「しりとり」を逆から読んで「りとりし」。名前のとおり、言葉を逆さまにしてつないでいきます。

そして、もう一つ決まりがあります。自分の番には、そこまでに出た言葉を最初から全部唱え直すのです。続けるほど長くなる、不思議な言葉の列。初めは勝負のつもりだった私たちも、いつの間にか二人でどこまで続けられるかを試すようになっていました。

言葉を逆さまにしてつなぐ

まず、言葉をひらがなやカタカナにして、一文字ずつ逆から読みます。「しりとり」なら「りとりし」、「すし」なら「しす」です。

つなぐのは、逆さまにしたあとの言葉同士。例えば、こんなふうに続きます。

りとりし → しんぶんし → しす → すみす → すいぐう → うとがりあ

逆さまにした言葉元の言葉
りとりししりとり
しんぶんし新聞紙(しんぶんし)
しす寿司(すし)
すみすスミス
すいぐううぐいす
うとがりあありがとう

「しす」の最後は「す」なので、次には「す」で始まる逆読みの言葉が必要です。元の言葉でいえば、「す」で終わるものを探します。人名の「スミス」なら、逆から読んでも「すみす」なのでつながります。その次も「す」で終わる言葉を考え、「うぐいす」を逆にして「すいぐう」と続けられます。

ふだんとは反対の方向から言葉を探すので、よく知っているはずの言葉も、少し違って見えてきます。

自分の番には最初から全部唱える

ここからが「りとりし」の大事なところです。自分の番が来たら、それまでの言葉を最初からすべて順番どおりに唱え、そのあとに新しい言葉を一つ加えます。

二人で遊ぶなら、例えばこんなふうに進みます。

  1. Aさん「りとりし」
  2. Bさん「りとりし、しんぶんし」
  3. Aさん「りとりし、しんぶんし、しす」
  4. Bさん「りとりし、しんぶんし、しす、すみす」

六語まで進めば六語を、十語まで進めば十語を唱えてから、新しい一語を付け加えます。言葉を増やすたび、次の人が覚えておく列も長くなっていきます。

順番を思い出しながら、次につながる言葉を探し、さらにそれを逆から読む。だんだん忙しくなってきます。

細かな決まりはしりとりを基本に

  • 同じ言葉は一度だけ。何度でも使えると、「しんぶんし」だけでずっと続いてしまいます。
  • 「ん」で終わる言葉は使わない。つながりや語尾は、逆読みしたあとの形で確かめます。
  • 小さな文字も一文字として逆にする。「ゃ」「ゅ」「ょ」「ぁ」「ぃ」などは、声に出すときには大きな文字として読むなど、発音しやすくして構いません。
  • 元の言葉が「ー」で終わるときは、その直前の文字をつなぎの基準にする。逆読みしたときの伸ばし棒の表記や発音も、みんなで読みやすい形にそろえます。

細かいところは、遊ぶ人同士で相談してください。途中で忘れたらそこで勝負を決めてもよいですし、思い出すのを手伝って続けても楽しめます。

勝負のつもりが二人の挑戦に

この遊びを考えたのは、中学二年生のころだったと記憶しています。友人と一緒に車で遠出に連れて行ってもらい、その道中で遊んでいました。

初めは、途中で忘れたり間違えたりしたほうが負け、というつもりでした。ところが、言葉が増えてくるにつれて、互いの記憶を確かめ合うようになっていきました。やがて、どちらが勝つかよりも、二人でどこまで長く続けられるかが楽しみになっていたのです。

相手が加えた言葉は、次に自分が唱える言葉にもなります。一語増えるたび、二人で覚えているものも一つ増えていく。長く続くと、新しい一語を付け加えるまでに、それ以前の言葉を分単位の時間をかけて唱えていた記憶があります。

毎回、最初は必ず「りとりし」でした。同じ一語から始めても、そこから先に生まれる言葉や進む道筋は変わります。当時も、その広がりを楽しんでいたのかもしれません。

当時の記録が一枚見つかりました

今回、この遊びを記事にしようと思って昔の資料を探したところ、当時の記録が一枚だけ見つかりました。

折り目のある紙に逆読みの言葉を縦書きで並べた、中学時代の「りとりし」の記録。「49」と「50個に届かず」の書き込みがある。
中学時代の「りとりし」の記録。「49個」と「50個に届かず」という書き込みが残っています。

逆読みした言葉が縦に並び、下のほうには大きく「49個」。その近くに「50個に届かず」という書き込みもあります。この紙には、四十九語まで続いたことが記されていました。

これが当時の最高記録だったかどうかは分かりません。ただ、五十語を一つの目標にしていたらしいことが、この書き込みからうかがえます。紙の折り目や書き直した跡、余白のメモも含めて、当時の熱中ぶりが伝わってくるようです。

なお、冒頭の六語は遊び方を説明するための例で、この紙の並びをそのまま写したものではありません。

アイフルデライフとダラサドーフーシ

記録の中には、こんな言葉もあります。

  • アイフルデライフ
  • ダラサドーフーシ

元の言葉は何でしょう。声に出しながら、逆からたどってみてください。

一つ目は、地名の「フィラデルフィア」です。一文字ずつ逆にすると「アィフルデラィフ」。小さな「ィ」を大きく読めば、「アイフルデライフ」になります。どこか外国語のようでもあり、何か意味がありそうでもある。この響きは、数十年たった今まで覚えていました。見つかった紙にも、確かに書いてあります。

二つ目は、「シーフードサラダ」。こちらは今回の記録を見て、そういえばこれも面白かったのだと思い出しました。「ダラサドーフーシ」となると、別の料理か、呪文の名前のようにも聞こえます。

当時遊んでいたテレビゲームの登場人物の名前なども交じっています。食べ物でも地名でも、人の名前でも、遊ぶ人が知っている言葉を材料にできます。互いに親しんでいるものが違えば、出てくる言葉も変わるでしょう。逆さまになった名前を聞いて、元の名前を当て合うのも楽しそうです。

覚えることと考えることを一緒に楽しむ

当時は、記憶力を鍛えようと思って始めたわけではありません。面白がって続けているうちに、何十語もの言葉を順番どおりに覚え、何度も唱えることになっていました。

こうして振り返ると、ずいぶんいろいろな力を使っていたのだと思います。出てきた言葉とその順番を覚える。抜かさずに思い出す。指定された文字につながる言葉を探して逆から読む。その間、相手の言葉にも耳を傾け、互いに確かめ合いながら、一つの遊びに集中し続けます。

覚えたものを取り出す力や、言葉を柔軟に扱う力も、遊ぶうちに鍛えられていたのではないでしょうか。勉強で何かを覚えるときや、日々の出来事を思い出すときにも、あの経験がどこかで役立っているのかもしれないと感じます。前後のつながりも一緒に覚えるので、物事を流れの中で捉える感覚にも通じていそうです。

私は、暗記や暗唱の面白さが、もう少し見直されてもよいのではないかと思っています。自分の中に覚えているものがあると、新しいことと比べたり、結びつけたりできます。「りとりし」でも、これまでの列を覚えながら、次の一語を考え続けます。覚えることと考えることが、一つの遊びの中にあるのです。

そして今も覚えている「アイフルデライフ」。意味の分からない響きを友人と面白がっていたことまで、一緒に思い出せる気がします。

まずは「りとりし」から

家族で、友人同士で、子ども同士でも大人同士でも。学校の休み時間や移動中のひとときにも、道具なしで始められます。

最初は五語や十語を目指すくらいでもよさそうです。慣れてきたら、もう一語、もう一語と伸ばしてみてください。五十語や百語を目指してみるのも楽しそうですし、思いがけない逆読みの言葉が一つ生まれるだけでも、その日の話の種になります。

何語まで続いたか、どんな面白い言葉が出てきたか。よかったら、お問い合わせから教えてください。

最初の一語は、いつもと同じ「りとりし」です。その先は、みなさんで続けてみてください。

ABOUT
わたなべ
わたなべ
東京大学法学部卒業。
司法試験合格、研修後、業界を転向。
“対話で学びを拓く”をテーマに活動しています。
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