生徒さんと話した日々⑧:「心がけるつらさ」Hさん
このカテゴリーでは、これまで一緒に学んだ生徒さんについてお伝えします。
もちろん名前は伏せていますし、細部はぼやかしてありますが、
どんな人物だったのかはご理解いただけるよう心掛けています。
出会いと、Hさんの第一印象
Hさんが最初に話してくれたことのひとつは、「読書を心がけている」ということでした。
本を読むと、いろいろな知識を得られるから。
そう説明してくれました。
ただ、そのときの印象としては、少しだけ無理をしている雰囲気もありました。
読書そのものが好きというより、「大事だと言われているからやっている」という感じが、どこかにあったように思います。
「これはよくない」「こうしなければいけない」
ゲームの話もよく出ました。
いろいろなゲームをやってきたけれど、最近はあまり面白く感じなくなってきたこと。
スマートフォンを用もなく触るのも、よくない気がすること。
そうしたことを、Hさんは自分の言葉で話してくれました。
今振り返ると、
- これはよくない
- こうしなければいけない
という考え方が、少しずつ強くなっていたのかもしれません。
計画を立てても、うまくいかない
当初は、一日に取り組む勉強の量や時間を一緒に計画してみました。
けれど、やはりうまくいきませんでした。
計画を立てること自体はできる。
ただ、その通りに進めることが難しい。
そうしたずれが、Hさんの中でも苦しさになっていたように思います。
本当に好きだったもの
その一方で、Hさんにははっきりと好きな世界がありました。
ネズミのキャラクターたちがいる、あの有名な場所です。
その世界観がとても好きで、よく訪れては、ぬいぐるみなどもたくさん買っていたそうです。
その話をしているときは、少し表情がやわらいでいたのを覚えています。
「こうしなきゃいけない」という話ではなく、ただ好きなものについて話している時間には、Hさんらしい呼吸が戻ってくるようでもありました。
大きく揺れた時期
ある時期、Hさんは大きく心身のバランスを崩しました。
一歩間違えば命に関わるような出来事にもつながりました。
そのときHさんが何を感じていたのか、どこまでを言葉にできていたのかは、こちらには分かりません。
ただ、その出来事が、Hさんの人生の中で大きな転機になったことは確かだと思います。
その後に生まれた関心
回復の過程では、カウンセラーの方と話をする時間が多くあったそうです。
その経験の中で、Hさん自身も、そうした仕事に関心を持つようになりました。
人と話すこと。
人の心に関わること。
支えるということ。
そうしたものに向かって、少しずつ目が開かれていったのだと思います。
そして最終的には、心理系の資格が取れる専門学校へ進学することになりました。
いま、振り返って思うこと
Hさんの歩みは、いわゆる一直線のものではありませんでした。
けれど、人の進路や人生というものは、本来そういうものなのかもしれません。
揺れること。
立ち止まること。
思ってもいなかった方向へ進むこと。
そうしたことを経ながら、その人なりの道が少しずつ見えてくる。
Hさんのことを思い出すと、そんなことを考えます。
いま、どのように過ごしておられるのかは分かりません。けれど、あのとき好きなものの話をしていたときの表情を、ときどき思い出します。
応援しています。
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「こうしなければならない」という発想と、自分の感覚とのあいだで揺れることについては、
こちらの記事でも触れています。
