誰かと話しながら考えてみること
「その心は?」
和会塾では、子どもたちから大人の方まで、さまざまな年代の方と対話を重ねています。授業の終わりには、その日や最近のことを漢字一文字で表してもらっています。一文字が出てきたら、たいてい私はこのように尋ねます。
答えはたとえば最近勉強を頑張っているから「勉」。葉が色づいてきたから「秋」。小説を書いている話ができたから「話」。
選ばれる字も、その理由もさまざまです。その日の授業を振り返る方もいれば、最近の暮らしや、目にした景色を思い浮かべる方もいます。
すぐには出てこないときもあります。考える様子を見ながら、しばらく待つこともあります。「実はここが一番難しいんです」などと冗談を言いつつ、それでも思いつかないときには、今回は点数にしてみようかと聞いたり、話に出てきたことから私が一文字を選んだりもします。
漢字を見ただけでは、なぜその字なのかまでは分かりません。理由を聞くと、「そこが心に残っていたのか」と気づくことがあります。同じ時間を過ごしていても、相手が何を受け取っていたかは、聞いてみて初めて分かるのです。
この短いやり取りにも、誰かと話す面白さがあると感じています。
話してみたいことは日々の中にある
本や映画のある場面が、いつまでも心に残っている。学校や職場で交わした言葉を、帰宅してから思い出す。初めて試したものが面白くて、誰かにも話してみたくなる。
暮らしの中には、少し立ち止まって話してみたいことがあります。
困っていることについて、どうしたらよいか考えたい日もあるでしょう。自分はこう思うけれど、ほかの人にはどう見えるのだろうと、聞いてみたいこともあります。楽しかった話から始まって、思いがけず大切なことへ話が及ぶ場合もあります。
話し始めるときに、考えがまとまっている必要はありません。説明してみて、初めて自分が気にしていたところに気づくこともあるからです。
ある出来事を順に話しているうちに、途中の一言がどうしても気になってくる。相手に尋ねられて考えると、最初に言った言葉では少し違う気がする。それなら、どのように言えば近いのか。
言い直したり、前の話へ戻ったりしながら、考えていることを確かめていけます。
似ている経験にも違いがある
私は、話を聞きながら、自分の経験をお話しすることもあります。似たことがあったときに何を感じ、どう考え、どのように対応したのか。そのときの話とつながるところがあれば、言葉にしてみます。
すると、似ていると思った経験にも、違いが見えてくることがあります。
起きた出来事は近くても、気になっていた部分は違うかもしれません。同じ振る舞いを選んでいても、そうした理由はそれぞれかもしれません。私が大事だと思って話したところよりも、別の部分に相手が関心を持つこともあります。
私の経験は、その方がご自身の場合を考えるための一つの材料になります。そして、その返答を聞く私にも、初めて気づくことがあります。以前の自分について、少し違う見方ができることもあります。
相手の経験や感覚に触れ、自分の中にも新しい考えが生まれる。私自身もその時間から受け取っているものがあります。それは、こうして人と関わる楽しさの一つです。
もちろん、いつも意見が一致するわけではありません。違うように感じたときには、私の受け取り方も、できるだけやわらかくお伝えします。同時に、お話の中で共感できるところを、私なりの言葉で返すこともあります。
その方は何を感じ、何を大切にして、その意見に至っているのか。そこを知ろうとしながら聞くと、意見が違っていても、もう少し尋ねてみたいことが出てきます。相手の考えに沿って、その先を一緒に考えることもできます。
自分の理解が合っているかは、言葉を返して確かめます。違っていれば、また聞き直せばよい。一度で分かったことにせず、やり取りを続ける中で知っていくことを大切にしています。
話すことに注意を向ける時間
身近な人との会話や、趣味を通じた交流にも、こうした発見はあると思います。オンラインで知り合った方とのやり取りが、大切な時間になることもあるでしょう。
和会塾では、約束した時間に1対1で向き合い、その方の話を聴き、言葉を交わすことに注意を向けます。
どの言葉が気になったのか。今の説明を、私はどう受け取ったのか。こちらから話したことは、相手にどのように届いているのか。必要に応じてメモを取りながら、聴くことにも話すことにも、丁寧に関わろうとしています。
ご本人の関心や、その日に扱いたいことを中心に進めます。出来事を整理してみたり、言葉の意味を確かめたり、別の見方を考えたりすることもあります。文章を一緒に読むことや、短く書いてみることもできます。
話したくないことまで話す必要はありません。私の考えに合わせる必要もありません。こちらが経験を話したときも、ご自身の場合には合わない、少し違うと感じたなら、そのことも聞かせていただければと思います。
時間には区切りがあるので、終わり方にも気を配っています。何について話し、何が心に残ったのか。お互いが多少とも振り返り、何かを持ち帰れるようにしたいと考えています。
冒頭の漢字一文字も、はじめは面白い遊び程度のものでしたが、いつの間にか続けているやり取りです。振り返ってみると、こちらが予想していたものとは違う字が出てくることもあります。その理由を聞く時間まで含めて、その日の対話なのだと思います。
また続きを話せる
話している間には、まだ言葉にできないこともあります。
その日はそれ以上考えられなくても、数日たって、ふと別の言い方を思いつくかもしれません。似た場面に出会い、前に話したことを思い出す場合もあるでしょう。
同じ相手と継続して話す時間には、「この前の話なのですが」と戻れるよさがあります。以前と考えが変わっていてもよいし、まだ同じところで迷っていても構いません。しばらく別の話をしてから、また取り上げることもできます。
その日のうちに、すべての問いに答えを出す必要はありません。何が少し分かり、何が気になったままなのかを確かめて、一度終えることもできます。
楽しみにしていたことの続きを話す日もあれば、前とは違うことに夢中になっている日もあるでしょう。その間に過ごした日々が、次の時間へ持ち込まれます。
一文字を尋ねたときに現れるものがさまざまなのも、一人ひとりがそれぞれの日々を過ごしているからなのだと思います。
和会塾で対話の時間を持つ
和会塾では、子どもたちも大人の方も、オンラインで1対1の対話の時間を持つことができます。好きなもの、学校や仕事、日々の暮らし、まだまとまっていない考えなど、そのときに話してみたいことから始められます。
子どもたち、生徒さんの学びや生活についての対話は、Bプラン「対話で『学び』を拓く」を中心にご案内しています。
大人の方の継続する対話や国語の学び直しは、Zプラン「大人の対話と国語」でお受けしています。対話を中心にすることも、関心に応じて文章を読んだり書いたりすることもできます。
和会塾は、診断・治療・心理療法を行う場ではありません。学びと対話の場として、ご本人が感じ、考え、言葉を選ぶ時間をともにします。
初回無料体験では、ご希望をうかがい、実際に言葉を交わす時間を持ちます。話題がきちんと決まっていなくても構いません。話す速さや問いかけ方、ご自身が考えるときの感触などを、確かめていただければと思います。
体験の場で受講を決める必要はありません。誰かと話しながら考えてみたいことがあるときに、こうした時間も選べると知っていただけたらと思います。
