コラム

生徒さんと話した日々⑦:「不合格なら出ていけ…!」Gさん

wowja

このカテゴリーでは、これまで一緒に学んだ生徒さんについてお伝えします。

もちろん名前は伏せていますし、細部はぼやかしてありますが、
どんな人物だったのかはご理解いただけるよう心掛けています。

ここではイイ話や成功譚ばかりを記述する意図はありません。
できる限り事実にとどめてまとめています。

出会いとGさんの第一印象

Gさんは、穏やかに話す方でした。

最初の雑談で印象に残っているのは、ドラマの話です。

偶然TSUTAYAで見つけた『トリック』にハマったのだと、少し嬉しそうに話してくれました。
仲間由紀恵さんや阿部寛さんのやり取りが好きだと。

好きなものの話をするとき、どこか安心したような表情になるのが印象的でした。

「できる自分」に寄りかかる

中学校では、成績は人並み以上に良かったそうです。

けれど二年生のある時期、人間関係がうまくいかなくなった。そのころから、

「勉強ができる自分」

に依拠するようになったと話してくれました。

できること、評価されること、点数という形で証明できること。
それらが、自分を支える軸になっていったようでした。

高校受験と、その重さ

高校受験のとき、ご家庭からは

「合格しなかったら家から出ていけ」
「志望校を下げるのはダメ」

と強い言葉をかけられたそうです。

結果として、志望校には無事合格。
本人も本当に嬉しかったと語っていました。

努力が報われた瞬間だったと思います。

ただ、個人的には相当に無理があったのだろうな、と感じました。何かが先送りされただけだったのかもしれないとも思います。

ついていけないという感覚

けれど高校生活が始まると、勉強は思うようにいきませんでした。

一年生は何とか乗り切ったものの、二年生のゴールデンウィーク頃から「置いていかれている感覚」が強くなったそうです。

そして七月には、学校へ行けなくなった。

「できる自分」によって支えられていた分、その足場が揺らぐと、どこに立てばいいのか分からなくなる。

そんな構図が、静かに見えていたように思います。

最後まで伴走できなかったこと

Gさんとは、受験の最後まで一緒に学習に取り組むことができませんでした。

ご家庭の事情もあり、途中で関係は終了しました。

今でも、ときどき思い出します。

ひとつの典型的な形を見た気がしているからです。

人間関係の揺らぎ。
評価への依存。
期待の重さ。
そして、ついていけないという感覚。

それらは特別な話ではなく、むしろ珍しくない。

だからこそ、忘れてしまわず考え続けたいテーマでもあります。

いま振り返って思うこと

Gさんは、決して弱い人ではありませんでした。

むしろ、とても真面目で、誠実で、周囲の期待に応えようとする力の強い方でした。

だからこそ、自分を支えていた軸が揺れたとき、大きく揺れてしまったのだと思います。

いまどこで、どんな時間を過ごしているのかは分かりません。
けれど、きっと彼女なりに新しいドラマなど見つけて、楽しみながら生活していることを願っています。

応援しています。

ABOUT
わたなべ
わたなべ
東京大学法学部卒業。
司法試験合格、研修後、業界を転向。
“対話で学びを拓く”をテーマに活動しています。
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